マルチモーダルバイオイメージセンサ研究会

研究・プロジェクト

研究紹介

1. CMOS技術による高速・高精細型イオンイメージセンサ

~世界最高性能のイメージセンサを創る~

目には見えないイオンや神経伝達物質をリアルタイムで可視化できる化学の目を持つセンサ。

pH分布の2次元リアルタイム測定をし、生体物質の観測が可能です。

  1. バイオセンサ技術とイメージセンサ技術を融合させることで、蛍光色素等を用いずにイオンや神経伝達の動きをリアルタイムで動画としてとれることができます。
  2. 電荷転送(CCD)技術により、イオンの信号を電子量に変換し、信号を積分する機構を利用することで従来技術の100分の1以下のイオン濃度の検出が可能になりました。
  3. 従来のイオン計測は“点”で行うという概念を、イメージセンサ技術を採用することで“面”で観察する概念の重要性を世界的に啓蒙し、新しい産業を引き起こすきっかけを作りました。

本センサを用いて脳内神経ネットワークの解明に向け、画素の微細化・高精度化・高速化、センサ出力の安定化などに取り組んでいます。また、本センサを用いて生物実験を行い、神経伝達物質をイメージングしています。

サブミクロンイオンイメージセンサ

2ミクロンの解像度0.5ミリ秒の時間分解能のものと、1.1ミクロンの解像度、30ミリ秒の時間分解能で観察できるセンサの開発に成功しました。

空間解像度 1μm以下、動作速度 2000fps、pH検出精度 0.01pH以上のセンサ仕様とし、シナプスのような微小空間におけるイオン(pH)分布の可視化を目指しています。

 

2. 生体刺入型 in vivo イオンイメージセンサ


時間分解能= 48fps (20.5ms) 空間分解能= 23.55μm
計測例
Gabazine添加時の脳内電位(終濃度10µM)
Gabazine添加により高周波のスパイクの信号と深層部のpH上昇

Gabazineに応答した脳内pHの周期的変化

※本研究は、自然科学研究機構生理学研究所 基礎神経科学研究領域 生体恒常性発達研究部門 鍋倉淳一教授との共同研究です。

 

3. 神経伝達物質(ACh,ATP, Lactate)イメージセンサ

~非標識神経伝達物質イメージセンサによる細胞可視化システムの構築にむけて~

細胞活動を可視化するシステムの構築に向けて研究を行っています。創薬のスクリーニング検査、生体から採取した細胞、血液などを調べる検体による臨床検査へ本センサが用いられることが期待されます。

 

・AChイメージセンサ

神経伝達物質アセチルコリン(Acetylcholine, ACh)は、副交感神経や運動神経の末端から放出され、ある種のシナプスを通して神経刺激を伝える役目を果たしています。骨格筋や心筋、内臓筋の筋繊維のアセチルコリンの受容体に結合すると収縮を促進します。
AChはAcetylcholine Esterase(AChE)による加水分解でチオコリンと酢酸に分解されたあとですぐに消失しますが、その過程で水素イオンが生じます。この、生成された水素イオンに注目し、本センサで水素イオンを検出することによりACh を検出できる原理としています。

 

・ATPイメージセンサ

Adenosine Tri Phosphate(アデノシン三リン酸)は、生体エネルギー源としての機能だけでなく、神経細胞から細胞外へ放出される神経伝達物質として重要な生体分子です。従来の蛍光法によるATPイメージングでは細胞に分子認識物を含む蛍光ラベルを付加するため生細胞への悪影響が懸念されます。本センサはラベルフリーで細胞外ATPを観察する方法として非常に有効とされています。

ATP測定原理
①ATPと酵素の反応によって水素イオン[H+]が生成される
②ATPをpHの変化として検出
③ATP濃度に依存してセンサ出力(感応膜表面の電位)が変化
 

海馬スライス錐体細胞層からのATP放出らしき信号を検知

(予想はされていたが,実際にその放出を観測した最初の例)

 

・Lactateイメージセンサ

乳酸(Lactate)は医学分野で注目されている神経伝達物質のひとつです。これまで可視化することが不可能であったLactateのイメージングが可能になりました。

 

 

4. MEMS Fabry-Perot 干渉計を用いたタンパク質センサ(豊橋技術科学大学 EIIRIS教授 髙橋一浩)

生体分子同士に働く分子間力を、標識を用いずに検出することが可能です。

5. MEMS可変カラーフィルタ(豊橋技術科学大学 EIIRIS教授 髙橋一浩)

ナノ構造により構造色を発生するサブ波長格子にアクチュエータ構造を追加して、格子間のギャップを近づけることによって構造色に変化を起こすカラーフィルタを提案しています。可動構造として、素子単位がナノスケールであるNEMSアクチュエータを新規に提案し、電引力により周期構造を変化させて反射光を変化させることに成功しました。

半導体微細加工技術により作製されるサブ波長格子カラーフィルタは、LSI集積回路との一体化が可能です。両者の製造技術の整合性を確認するために,前工程でn-MOS回路を製作し、後工程でNEMS可変カラーフィルタを集積化し,ナノメカニカル素子と集積回路の異種機能集積化に成功しました。

6. 植物刺入型イオンイメージセンサ(豊橋技術科学大学 EIIRIS准教授 野田俊彦)

~植物体内の物理量・化学量を可視化~

植物工場に代表されるスマート農業では、植物の生育状態をモニタリングすることが重要です。イオンイメージセンサ技術を応用して、植物体内の物理量・化学量を可視化する植物刺入型のセンサを開発しています。植物の生育に必要な必須栄養素や、光合成によって産生された糖などの量(濃度)や輸送の様子を本センサで可視化する事により、植物工場の生産効率の向上や、植物生育メカニズムの解明につながると期待されます。

 

7. 複数のイオン・ガス・においセンシングを実現(豊橋技術科学大学 EIIRIS准教授 野田俊彦)

検出特性が異なる複数のセンサを組み合わせて多項目を計測し、そのデータ解析に機械学習技術を利用してマルチモーダルセンシングを実現する,新しいセンシングアプローチに取り組んでいます。CMOS集積回路技術で作製 した画像出力型センサとAI技術の融合により、複数イオンの同時計測、複数ガスの同時計測やにおいセンシングの実現について研究を進めており、農業や介護・医療,バイオサイエンスの分野への展開を検討しています。

 

プロジェクト紹介

豊橋技術科学大学 産学共創プラットフォーム共同研究推進プログラム(OPERA)
マルチモーダルセンシング共創コンソーシアム

 

CREST
プロセスインテグレーションによる機能発現ナノシステムの創製
統合1細胞解析のための革新的技術基盤